こんこんこん

こころ動くこと

「わたしは相当取り乱して悪化させていますね。とても心理的離脱なんてできそうにないです。」

「うん、でもその気づきが回復への第一歩よ。失恋をした時はみんな混乱するのが自然で、考え方が極端になりがちだからいつもの自分らしい行動がとれなくなる。少しずつ気持ちを整理して前向きに失恋を乗り越えていきましょう。」

「はい、やっぱり簡単ではないんですね」

「そうね、やっぱり何かを乗り越えるって簡単ではないよね。でも、

明日香さんはね、今本当に真面目に苦しんでいる。それはとても回復にとって必要なことよ。失恋というしんどくて当然のことをきちんと消化しようとしてる。だから自分のことをしつこいとか、バカだとか思わないでいてあげてね。しっかりとその気持ちを感じて消化していくことが回復への近道だからね。」

「はい(泣)」

明日香は今日子の言葉を聞いて涙がこぼれた。

「今日話した心理的離脱は理想的なコーピングだけど、頭でわかっていてもすぐにはできないことってあるよね。まずは、自分の気持ちを正直に表現することが大切よ。明日香さんは日記って書く?」

「うーん、日記は書く習慣がないです。」

「そっか、じゃあ明日から1週間の期限付きでこのノートに今の失恋の辛さや彼への恨みの気持ち、後悔の気持ちなどを書いてみようか?」

そういって今日子はとてもきれいなグリーンの表紙のノートを明日香に手渡した。明日香はノートを受け取り、ページを開く。当然ながら何も書かれていない真っ白なページが続く。

「わかりました。やってみます。」

「うん、これが今週の宿題ね。この宿題をやるときは、1日30分なら30分と時間を決めてほしいの。だらだら書くのではなく、時間を決めて書く。そして、どんな汚い言葉でもいいから正直な気持ちを書くこと。これがこの宿題の決まりよ」

「どんな汚い言葉でも・・・ですか。」

「そう、相手を恨む気持ちも大切なあなたの感情よ。だからどんな言葉でも自分で批判的にならずに心の中から出してあげることが大切なの。」

「わかりました。やってみます。」

「うん、来週そのノートをもってきてね」

「はい」

「あっそうだった。そういえば、明日香さんの趣味ってなんなの?」

「えっ趣味ですか?アニメを見るとか、好きなアーティストのライブをネットで漁ることぐらいですかね。」

「うん、いいじゃない。もしね、その宿題をしていてとても気分が悪くなった時や、しんどくなった時はそういった好きなことをやって気分を落ち着かせてね。」

「はい、わかりました。」

時間になったので、第4回目のカウンセリングは終了した。明日香の問題は解決はしていないが、来た時よりも心が軽くなっていた。明日香は今日から今日子から出された宿題をやってみようと思っている。