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明日香は、今日子のカウンセリングを週に1度受けることを決めた。カウンセリングの目的は、今の状態から回復してきちんと大学に復学すること。前回のカウンセリングから1週間、今日は2回目のカウンセリングにやってきた。
「こんにちは、失礼します」
明日香は元気のない声で答える。
「こんにちは、明日香さん、ちゃんと来たのね」
今日子ははっきりとした元気そうな声でそう言って明日香にソファに座るように促した。大学のカウンセリングルームは、簡素で結構狭い、でも今日子がいるだけで華やかな空間になるから不思議だ。さっそく今日子は明日香の方を見て質問した。
「明日香さん、今週1週間はどんな風に過ごしていたの?」
正直、まともな過ごし方はしていない。明日香は口ごもり
「えーと、、、」
「明日香さん、そんなきちんと生活しているなんて期待していないからね」
今日子は笑った。
「適当に過ごしていました。TVを見たり、スマホを見たりして」
「そう、じゃあ何を考えながら過ごしていたの?」
<何を考えながら?難しい質問だな、普段何を考えることが多いだろう?>
明日香は自分が考えていることを振り返ってみた。結局ほとんど達也のことだ。達也とまた連絡を取りたい、達也とどうやったらやり直せるだろう?自分がこうしていたら今頃こんなことにはなっていなかったのに、そんな過去の後悔ばかりが思い浮かび、毎日泣いて過ごしている。
「付き合っていた彼のことを考えることが多いです。自分がきちんとしていたら今頃こんなことにはなっていなかったのにとか、あとは、このままずっとひとりぼっちなんだろうか、そんなことを考えています。」
「そっか、明日香さんはこれからずっとひとりぼっちだっておもうんだ。でもそれって本当かな?そりゃもちろん失恋は辛い。でもたったひとりにフラれたことで一生ひとりぼっちなのかな?」
「わたしなんて友達はいないし、親からも見捨てられているし、自分にみたいなメンヘラにこの先彼氏なんて出来るはずがないです。それに達也みたいないい人は絶対に他にいない」
「そう、そんな風に考えているのね。そしてその考えをずっと巡らせて一日を過ごしているの?」
「そうです。」
「それは健康に悪いわね」